📖『恥をかくのが怖くて、何もしてなかった夜の話』 3夜

🍸 BAR PRIMO 夜話──深夜0時の処方箋 

🕛冒頭ナレーション
深夜0時すぎ。
店のドアが閉まる音が、
ちょっとだけ大きく聞こえる時間。
答えは出てへん。

でも「失敗した自分の顔」だけは、
やたら鮮明に想像できる夜。

🕛 AM 0:07🍺 酔っ払い
──頭が元気すぎる夜──

🍸マスター
「なぁバッカス、動かへん人の理由って、
結局これちゃうか思うねん」

🍷バッカス(悩んでる人しか見えない神さま)
「ほう。“忙しい”か?」

🍸マスター
「ちゃう。“恥かきたない”や」

🍷バッカス
「出たな。人生ブレーキ界のラスボス」

🍸マスター
「失敗するのが怖いんちゃうねん。
“あの人、アホやな”って思われるのが嫌なんや」

🍷バッカス
「せやな。
転ぶのはええけど、
転んだ瞬間の静止画が一生残る気がするんや」

🍸マスター
「バーで喋ってる時は、みんな威勢ええのにな」

🍷バッカス
「“本気出したらできる”って言葉、
だいたい保険かけすぎて原型留めてへん」

🍸マスター
「言うたんなや…」

🍷バッカス
「安心せぇ。
ワシもその保険、三重掛けで加入してた時期ある」

🕐 AM 1:23🍶 かなり酔っ払い
──感情が先に出る夜──

🍸マスター
「恥って、なんであんなに怖いんやろな」

🍷バッカス
「簡単や。“自分はできる側”の席に
しがみつきたいからや」

🍸マスター
「おお…」

🍷バッカス
「失敗したら、その席から
『一回お降りください』
って言われる気がすんねん」

🍸マスター
「でもその席、実は誰も
指定してへんのにな」

🍷バッカス
「せや。
自由席やのに、
勝手に指定席やと思い込んでる」

🍸マスター
「せやから、
恥かくくらいなら何もせん方がマシになる」

🍷バッカス
「“やらんかった自分”は、
まだ優秀なままやからな」

🍸マスター
「厳しいな…」

🍷バッカス
「事実や。でもな、
30年バー見てきて思うのはこれや」

🍸マスター
「何や?」

🍷バッカス
「恥かいた人ほど、あとでよう笑う」

🍸マスター
「確かに。最終的に笑い話に変えよるな」

🍷バッカス
「笑いにできた時点で、
もう一段、上や」

🕒 AM 2:58🥴 泥酔
──理屈が壊れる夜──

🍷バッカス
「なぁマスター、恥かかへん人生って、
どんな人生やと思う?」

🍸マスター
「……何も起きへん人生?」

🍷バッカス
「せや。
誰にも覚えられへん人生や」

🍸マスター
「それはそれで寂しいな」

🍷バッカス
「せやからな、恥は通行料みたいなもんや」

🍸マスター
「払わんかったら?」

🍷バッカス
「次の景色、見られへん」

🍸マスター
「今日の処方箋は?」

🍷バッカス
「これだけ👇
『一回だけ、ダサい自分を外に出せ』」

🍸マスター
「神さま、ほんま雑やな」

🍷バッカス
「雑やけどな、
一生効くで」

🌙 追記(帰り道)
ゲストは店を出て、
自分の影を一瞬だけ見る。
ちょっと苦笑いして、「まあ、ええか」と呟く。
マスターはカウンターを拭きながら思う。

――恥かいた夜ほど、あとで語れる夜になる。
ワシの話が長いのも、だいたい恥の量やけどな。

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