📖 『ちゃんとしてる人ほど、損してる気がする夜。』 9夜

🍸 BAR PRIMO 夜話──深夜0時の処方箋


🕛 冒頭ナレーション
深夜0時すぎ。
「ちゃんとしなきゃ」が、無意識に口癖になる時間。
答えは出てへん。
でも“ちゃんとしてる自分”だけが、
なぜか今日も報われてへん気がする夜。

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🕛 AM 0:07|🍺 酔っ払い
──頭が元気すぎる夜──

(カウンターの端。背筋の伸びたゲストが、
グラスをコースターの真ん中に丁寧に置く)

👤ゲスト
「ちゃんとしてる方やと思うんですけどね…」

🍸マスター
「思う、やなくて
ちゃんとしすぎてるで」

🍷バッカス
「ちゃんとしすぎて、
空気まで畳んでる」

👤ゲスト
「遅刻せぇへんし、約束も守るし、無理も言わへんです」

🍸マスター
「バーでは珍しいタイプや」

🍷バッカス
「せやな。
“ちゃんとしてる人”は、
だいたい最後に来る」

👤ゲスト
「でもなぜか、
要領ええ人の方が得してる気がして…」

🍷バッカス
「気やない。
だいたい得してる」

🍸マスター
「言い切るなや」

🍷バッカス
「現場30年見てきた神さまや」

🍸マスター
「ワシもな、
ちゃんとしてる人見ると
反射的に頭下げてまう。
癖や。治らん」

🍷バッカス
「それ、敬語の過剰摂取やな」

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🕐 AM 1:23|🍶 かなり酔っ払い
──感情が先に出る夜── 

🍸マスター
「なぁバッカス、
ちゃんとしてる人って、
何で損しがちなんやろ」

🍷バッカス
「理由は単純や」

👤ゲスト
「聞きたいです」

🍷バッカス
「何も言わへんからや」

🍸マスター
「……確かに」

🍷バッカス
「我慢して、察して、
自分で処理してまう」 

👤ゲスト
「迷惑かけたくなくて…」

🍷バッカス
「それな、優しさちゃう。
自己完結癖や」

🍸マスター
「きつい言い方やな」

🍷バッカス
「せやけどな、
ちゃんとしてる人ほど
“言っていい権利”使ってへん」

👤ゲスト
「言っていい…?」

🍸マスター
「しんどい、とか
無理、とか
頼みたい、とかな」

👤ゲスト
「言ったら、崩れそうで…」

🍷バッカス
「崩れへん。
むしろ空気が動く」

🍸マスター
「ワシはな、
空気読んで読んで読みすぎて、
自分の出番なくなったことある」

🍷バッカス
「それ、
ただの“消える芸”や」

🍸マスター
「拍手も起きへん」

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🕒 AM 2:58|🥴 泥酔
──理屈が壊れる夜──

🍷バッカス
「なぁ、
ちゃんとしてる人に
一個だけ足りてへんもん、
何やと思う?」

👤ゲスト
「……ずるさ?」

🍸マスター
「惜しいな」

🍷バッカス
「頼る勇気や」

👤ゲスト
「頼る…」

🍷バッカス
「ちゃんとしてる人はな、
一人で完成しようとしすぎる」

🍸マスター
「人生、
共同制作やのにな」

🍷バッカス
「今日の処方箋、これだけ👇
“今日は一回だけ、ちゃんとせんでええ”」

👤ゲスト
「一回だけ…」

🍸マスター
「バーで言うたら、
十分すぎるな」

🍷バッカス
「せや。
一回崩れたら、
“ちゃんと”が優しくなる」

🍸マスター
「ワシもな、
ちゃんとしようとして
何回も一人相撲した」

🍷バッカス
「しかも毎回、
負け試合や」

🍸マスター
「横綱不在やのにな」

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🌙 追記(帰り道)
ゲストは会計の時、
「今日は奢ってもらっていいですか」
と小さく言う。
マスターは何も言わず、うなずく。

夜風に当たりながら、
ゲストは少しだけ肩の力を抜く。
マスターは店を閉めながら思う。

――ちゃんとしてる人ほど、
人生を一人で背負いすぎる。
ワシもな、
ちゃんとしようとして
何回も一人相撲した。
せやから今は、
ちょっと崩して続けてる。

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