
🍸 酔っぱらいの神さまがいる店。
──BAR PRIMO 夜話
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🪞 導入文
人生には、
ときどきこんな言葉に出会う夜がある。
「夢を追いかけろ。」
夢を持て。
夢を叶えろ。
夢に向かって走れ。
そんな言葉を聞くたび、ふと思う。
「いや…そんなに走らなあかんの?」
そんな夜、
ミナミのバーで神さまが言う。
「それな。」
「夢、追いかけすぎや。」
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📢 ナレーション
深夜0時すぎ。
大阪ミナミの雑居ビルの最上階。
BAR PRIMO。
氷がカランと鳴る。
静かなジャズと、グラスの氷が溶ける音。
カウンターの端では神さまが
ハイボールを飲みながら
ポテトチップスを食べている。
夢というより
夜食を追っている顔である。
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🌌 深夜の酔っぱらいトーク
「夢を追え問題」
👤 ゲスト
「マスター…」
🍸 マスター
「どうしました?」
👤 ゲスト
「最近よく言われるんです。」
「夢を追いかけろって。」
🍷 バッカス
「ほぉ〜」
ポテチを一枚食べる。
「また出たな。」
👤 ゲスト
「え?」
🍷 バッカス
「夢追いかけ推進委員会。」
👤 ゲスト
「そんな団体あるんですか?」
🍷 バッカス
「知らんけど日本にめっちゃおる。」
🍸 マスター
「SNSに多いですね。」
🍷 バッカス
ハイボールを一口。
「聞くけどな。」
「夢ってな。」
👤 ゲスト
「はい。」
🍷 バッカス
少し間を置く。
「そんな逃げるもんか?」
👤 ゲスト
「え?」
🍷 バッカス
「夢追いかけるってな。」
指を立てる。
「だいたいこういうイメージやろ。」
「遠くに夢ある。」
「走る。」
「追いかける。」
👤 ゲスト
「はい。」
🍷 バッカス
グラスを回す。
「でもな。」
「ワシ、神さま長いことやってるけどな。」
少し笑う。
「夢、そんな逃げへん。」
👤 ゲスト
「え?」
🍷 バッカス
枝豆を皿にポン。
「むしろな。」
「逃げるの人間や。」
👤 ゲスト
「……」
🍷 バッカス
「夢いうのはな。」
「遠くにあるんちゃう。」
少し間を置く。
「だいたい今やってることの、
ちょっと先にある。」
👤 ゲスト
「……」
🍷 バッカス
「料理人も。」
「音楽家も。」
「社長も。」
指を立てる。
「最初から“これが夢や!”
言うて始めてへん。」
👤 ゲスト
「そうなんですか?」
🍷 バッカス
ハイボールを一口。
「だいたいな。」
「なんとなく始める。」
「なんとなく続く。」
「なんとなく深くなる。」
少し笑う。
「ほんで後から言うねん。」
「これが夢でした。」
🍸 マスター
「後付けの夢。」
🍷 バッカス
「せや。」
ニヤッと笑う。
「夢追いかけるよりな。」
グラスをコトンと置く。
「目の前をちゃんと歩く方が早い。」
👤 ゲスト
「……」
🍷 バッカス
「しかもな。」
少し間を置く。
「夢追いかけてる人。」
「だいたい横の景色見てへん。」
👤 ゲスト
「……」
🍷 バッカス
ハイボールを飲み干す。
「せやからな。」
「ワシからのアドバイスや。」
👤 ゲスト
「お願いします。」
🍷 バッカス
ニヤッと笑う。
「夢は追うな。」
「近づけ。」
👤 ゲスト
「近づけ?」
🍷 バッカス
笑う。
「ゆっくり歩いてたら。」
「だいたい向こうから寄ってくる。」
🍸 マスター
「猫みたいですね。」
🍷 バッカス
ニヤッと笑う。
「夢も猫も追いかけたら逃げる。」
少し間を置く。
「放っといたら膝に乗る。」
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🫧 エピローグ
ミナミの夜では、
大きな夢を語る人より
ちょっと迷っている人の方が
カウンターに座る。
でも。
神さまのしょうもない例え話を聞いていると、
なぜか少し歩いてみる気になる。
BAR PRIMOでは今夜も、
神さまがポテチを食べながら
誰かの“夢の夜”を
少しだけ笑いながらほどいている。
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