
🍸 酔っぱらいの神さまがいる店。
──BAR PRIMO 夜話
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🪞 導入文
人生には、
ときどきこんな疑問が湧く夜がある。
「自分、ほんまは何がやりたいんやろ。」
好きなこと。
夢中になれること。
情熱を注げる人生。
そんなもんがどこかにある気がして。
でも見つからん。
そんな夜、ミナミのバーで神さまが言う。
「それな。」
「だいたい“やりたいこと”ちゃうねん。」
「あとからそう呼ばれただけや。」
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📢 ナレーション
深夜0時すぎ。
大阪ミナミの雑居ビルの最上階。
BAR PRIMO。
グラスの氷が、カランと鳴る。
そのカウンターの端で
今日も神さまがハイボールを飲んでいる。
しかも、めっちゃ酔っている。
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🎭 会話劇
👤 ゲスト
「マスター…」
🍸 マスター
「どうしました?」
👤 ゲスト
「自分、やりたいことが分からないんです。」
🍷 バッカス
「ほぉ〜また出た。」
👤 ゲスト
「え?」
🍷 バッカス
「“やりたいこと分からん族”やな。」
👤 ゲスト
「族?」
🍷 バッカス
「今な、日本でめちゃくちゃ増えてんねん。」
👤 ゲスト
「そうなんですか…」
🍷 バッカス
「そらそうや。」
ハイボールを一口飲む。
🍷 バッカス
「だってな…」
「やりたいことってそんな簡単に分かるなら」
「ワシ、今ごろ神さまやってへん。」
👤 ゲスト
「いや、神さまですよね?」
🍷 バッカス
「それな。」
「こっちも気づいたら神さまになってただけや。」
👤 ゲスト
「え?」
🍷 バッカス
「子どものころな。」
「将来の夢」
“酔っぱらいの神さま”って言う奴おるか?
👤 ゲスト
「…いませんね。」
🍷 バッカス
「せやろ。」
グラスを回しながら言う。
🍷 バッカス
「つまりな。」
「人間の“やりたいこと”ってな。」
「だいたいあとから名前つくねん。」
👤 ゲスト
「あとから?」
🍷 バッカス
「そうや。」
「最初はな。」
「なんとなくやってただけ。」
「おもろいから続けてただけ。」
「気づいたら」
「それが人生になってる。」
👤 ゲスト
「じゃあ…」
「やりたいことって探さなくていいんですか?」
🍷 バッカス
「探してもええけどな。」
「たいていの人。」
指を一本立てる。
🍷 バッカス
「探してる時間の方が長い。」
👤 ゲスト
「……。」
🍷 バッカス
「しかもな。」
「やりたいこと探しとる人の特徴教えたろか?」
👤 ゲスト
「なんですか?」
🍷 バッカス
「だいたい今やってること舐めとる。」
👤 ゲスト
「えっ」
🍷 バッカス
「いやほんまやで。」
「料理人も。」
「ミュージシャンも。」
「社長も。」
「だいたい最初は」
「“これやりたい!”って始めたんちゃう。」
「なんとなく始めて。」
「なんとなく続けて。」
「なんとなく深くなった。」
グラスをコトンと置く。
🍷 バッカス
「つまりな。」
「やりたいことって。」
少し笑う。
「歩いたあとに出来る」
「足跡の名前や。」
👤 ゲスト
「……」
🍸 マスター
「いい言葉ですね。」
🍷 バッカス
ニヤッと笑う。
「せやからな。」
「やりたいこと分からん奴にアドバイスしたろ。」
👤 ゲスト
「お願いします。」
🍷 バッカス
「とりあえず明日なんかやれ。」
👤 ゲスト
「それだけですか?」
🍷 バッカス
「それだけや。」
「やりたいことってな。」
「考えて見つかるもんちゃう。」
「やってる途中で湧いてくる。」
そして最後に一言。
🍷 バッカス
「それでも見つからんかったら」
「またここ来い。」
👤 ゲスト
「はい。」
🍷 バッカス
「ワシもまだ探してる途中やから。」
👤 ゲスト
「神さまでも?」
🍷 バッカス
ハイボールを飲み干す。
「当たり前や。」
少し笑う。
「神さまやってだいたいノリで生きてる。」
「人生なんてそんなもんや。」
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🫧 エピローグ
その夜、BAR PRIMOのカウンターで
ひとつの勘違いが静かにほどけた。
やりたいことは、
どこかに落ちてる宝物やなくて
たぶん、
歩いたあとに残る足跡みたいなもん。
グラスの氷がカランと鳴るころには
ゲストの顔も少しだけ軽くなっていた。
深夜のミナミでは
神さまがどうでもええ顔して
わりと大事なことをぽろっと言う夜がある。
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