🍸バープリモ劇場『恋って、告白せんでも、始まる時あるよな。』

🍸バープリモ劇場
『恋って、告白せんでも、始まる時あるよな。』

── “口説く”より、“残る”ことが大事な夜がある。

（深夜0時すぎ、土曜の雨。しとしと静かなバープリモ）

○マスター（グラスを磨きながら独り言）
「“好きです”って言葉より、“あの夜、楽しかったなぁ”って思い出が残ってたら、もうそれって……始まってるんやないかな〜。」

（そこへユカリとナナが入ってくる。濡れた傘をたたみながら）

●ユカリ（34歳・スピ迷子）
「マスター、それめっちゃわかる！うち、昔は“絶対に告白せなあかん派”やってんけど……
今聞いたら、ナットクやわ（笑）」

●ナナ（36歳・OL）
「“どう伝えるか”ばっかり考えて、“一緒におる時間”がおろそかになることあるよな。」

○マスター
「せやろ。恋って、“伝えたら叶う”より、“気がついたら一緒にいた”のほうが、実は深かったりするんやで。」

（そこへカズオが登場。グレーのコートに哀愁をまとって）

●カズオ（45歳・離婚3回）
「……それ言えるんは、ちゃんと“デートが楽しい人”やで。
俺なんか、デート中ずっと“この後どこで告白しよ”って考えてもうて、飯の味、全然せえへんかったわ。」

●ナナ
「出た、“告白タイミング迷子男子”！」

●ユカリ（爆笑）
「それ、“トイレ行ってる間に気持ち固めて戻ってくる男”やな！」

○マスター（くすくす笑って）
「ほんまはな、“告白せんと始まる恋”って、“この人とおると、なんか心地ええな”
って感覚が、ちょっとずつ積もっていくもんやねん。」

●ナナ（うなずきながら）
「思い返してみたら、長く続いた人って、最初に何言われたかより、“どこ行って何して笑ったか”が残ってる。」

●カズオ
「俺なんか、焼き肉の網替えに命かけたデートあってん。“肉焦がさん男”ってとこだけ褒められて、そのとき、泣きそうなったわ。」

●ユカリ（ニヤリ）
「それが“ときめき”なんちゃう？焼き網越しの愛やん。」

（カウンターに笑いと静かな音楽が交差する）

○マスター（やわらかく）
「“言うたら叶う恋”もロマンやけど、“言わんでも続く恋”には、“思いやりの記憶”がちゃんと要るねん。それは、ちょっとずつ、一緒に作るもんやからな。」

──

マスターが出した一杯は、白ワインとオレンジのホットカクテル。グラスには小さく、こう書かれていた。

「また会いたくなる味。」

●ナナ（グラスを見ながら）
「……恋も、そんな味やったらええなぁ。」

○マスター（独り言のように）
「口説くより、また会いたいと思われる人。それができたら、もう……告白せんでも、ほぼ恋人や。……😁」

（一同、ふっと笑ってグラスを合わせる）

📻《ナレーション》

“ちゃんと気持ちを伝えなきゃ”——もちろん、それも大事や。でもな、“伝える”より先に、“どう一緒に過ごしたか”の方が、ずっと心に残る。

思いやりって、言葉やなくて、相手の表情をそっと見て、歩幅を合わせてあげることかもしれへん。

恋が始まるのは、告白のあとやない。「また会いたい」って思われた、その瞬間から、静かに始まってるんや。

焦って距離を縮めるよりも、“また会いたい理由”をひとつだけ、そっと置いて帰る。ほんまに惚れさせたいなら、それくらいがちょうどええ。

○マスター（照れくさそうに）
「……ま、こういう話してる時点で、“昭和の恋愛観”やな〜って、笑われるかもしれんけどな。

せやけど、“また会いたくなる人”ってのは、時代が変わっても、やっぱり強いんちゃうか。……知らんけど。」

── そんなマスターの言い訳が、今夜はやけにあたたかく聞こえた。